受任通知発送から申立準備まで
目次
初回相談の予約から受任通知を発送するまでの手続き等は、前回の記事で確認しました。
本記事では、受任通知を発送してから申立の準備までを確認します。
ある程度やることは決まっているので、早めに慣れてしまって、迅速かつ適切にこなせるようになりましょう。
受任通知発送後にやること
基本的には、受任通知を発送することにより、債権者は、債権届や取引履歴を開示してくれます。
たまに開示が遅くなる債権者もいますが、どうしても取引履歴等の集まりが遅いという場合には、受任通知が届いていない可能性も念頭に置きながら、債権者に確認します。
債権者対応
開示する際やその後に債権者から方針等の連絡が来ることが多いです。
最初から破産方針と決まっている場合には、破産方針ということと申立時期の見込みについて答えてしまってもよいでしょう。
もっとも、本人が気づかない間に相続しており、その相続財産の権利関係が複雑だった、など想定外の事態はつきものですから、慎重に回答しましょう。
また、後々消滅時効などもあり得るため、「債務承認」と取られかねない発言には気を付けましょう。
一般の銀行や大手のサラ金であれば、それほど問題にはなりませんが、闇金やそれに近いような債権者の場合には、後々紛争の種、ひいては弁護過誤の事態になりかねませんので要注意です。
取引履歴開示以外の債権者以外の動き
取引履歴開示以降、債権者にも動きがあります。
基本的には、次の通りです。
- 方針の確認(回投票など)
- 相殺の通知(当該債権者が銀行で、その銀行の預金口座に預金があった場合など)
- 和解案の提示
- 代位弁済の通知
- 保証の実行の通知
あたりです。
代位弁済等により債権者に変更が出た場合は、後述の申立書における債権者一覧中に元債権者と現債権者とを記載することになります。
債権者一覧表の作成
申立書に添付する資料ですが、取引履歴の開示を受けるたびに随時更新してしまった方が状況を確認しやすいです。
また、状況の確認という意味では、前述の債権者の動きについては、一覧表を自己で作成してしまってもよいかもしれません。
多くの債権者がいると、問い合わせが来た際に、状況を即座に思い出すのに苦労するためです。
申立書の作成
方針の再検討
債権者からの取引履歴の開示を一通り受けたら、債権者一覧を再度見直して方針を再検討します。
本当に自己破産で良いのか、任意整理、民事再生の途はないのか、などです。
自己破産を選択する際には、一般に日常生活に支障はほとんどないという説明をするものの、その後再度自己破産をするには7年以上経過している必要があります。
その依頼者にとって、自己破産の選択が良いのか悪いのか慎重に検討してあげましょう。
申立の準備
管轄
管轄は、債務者の普通裁判籍を管轄する裁判所です。
要は、その依頼者の住所のある地域を管轄する裁判所です。
陳述書の作成
作成手順
申立書には、陳述書を添付します。
本人が自己破産しなければならないことを説明するための書面です。
記載する部分が多岐にわたるため、私は、おおよそ次の手順で完成させています。
- 作成方法を本人に説明 ※特に生活費については、収支ほぼ同じになるように
- 添付書類リストを手渡す
- 持ち帰ってもらい鉛筆で記載してもらう
- 添付書類を収集してもらう、持参してもらう
- 相談日程を調整し、先に郵送等してもらう
- 要確認事項の特定、不足書類の確認
- 相談日に完成を目指す、完成
- PCで作成し、整える
各裁判所の書式
各裁判所によって、書式が異なりますので、確認してください。
どの陳述書にも「債務超過状態に至った経緯」を記載する欄があると思います。
この欄は、本人の文章力で表現できそうなら良いですが、基本的には、弁護士が入っている以上は、弁護士が整理し裁判所に分かりやすく作成しておくことが求められているでしょう。
そのため、文案を作成し、本人に確認してもらうという方法が効率的かつ正確だと思います。
添付書類
添付書類として必要な書類も各裁判所によって異なります。
源泉徴収票や保険関係の書類などは、発行までに時間がかかる場合がありますので、できるだけ早く発行手続きに入れるよう依頼者に指導します。
どうしても必要書類が手に入らない場合は、報告書等で代用できたりしますので、書記官などに確認しつつ進めましょう。
申立費用など
どの自己破産申立においても、次の項目の費用がかかります。
もっとも、各具体的な額は、各裁判所によって異なりますので、確認してください。
- 申立手数料
- 官報公告費
- 予納郵券
これは同時廃止事件の場合です。
管財事件となる場合、
- 引継予納金
の納付が必要になります。
破産管財人の報酬の引き当てとなる費用です。
簡易な場合と複雑な場合とで金額が分かれます。
この点の説明は当初よりしておく必要があります。
お金のない依頼者にとっては、高額な費用ですし、当初同廃見込みの事件でも途中で知らなかった相続財産が出てきて思いがけず管財事件になる場合があるためです。
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まとめ
以上が、受任通知発送後、申立準備までの手続きの流れです。
陳述書の作成や添付書類の収集など、専門家が作成する場合と異なり、遅くなることが少なくありません。
そのため、依頼者の性格等も踏まえながら、スムーズに申立ができるよう道筋を示しながら進める必要があります。
初めて手掛ける場合は、複雑とも思えますが、基本的には量が多いだけですので、整理しながら進めれば、すぐに慣れるでしょう。
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