許可をもらいやすい保釈請求書を作成するにはどうやって作成すればいいの?証拠集めの方法と共に解説します
目次
国選弁護を行っていて、公判の準備をしていると被告人も痺れをきらし、早く外にだしてほしいという要望を受けることがあります。
公判請求後は、保釈請求を行うことになりますが、その際には添付資料の充実化が必要になります。
メモ
※公判請求前は、勾留決定に対する準抗告又は勾留取消請求を行う必要があります。厳密には、公判請求後も、これらの申立てを行うこともできますが、基本的には、保釈請求を行うことがほとんどです。
そこで、今回は、許可をもらいやすい保釈請求書を作成するには、
- どのような活動を行えばいいのか
- どのような資料を集める(作成する)必要があるのか
という観点から解説していきます。
保釈請求書で記載するべき事項
保釈請求書には何を記載することになるのか
そもそも保釈請求書には何を記載するべきでしょうか。
ここは、研修所でも何度も繰り返し問われている部分でしょうから、項目だけは、最低限出てくると思います。
- 必要的保釈事由にあたること
- 裁量的保釈を認めるべきこと
- 罪証隠滅のおそれなし
- 逃亡のおそれなし
- その他Ex身柄拘束により被る不利益が、その必要性を陵駕していること
このあたりを記載していくべきです。
最初にゴールを定めておかないと、途中ではもう間に合わないということにもなりかねませんから、念頭に置いて着手しましょう。
メモ
なお、各事項を実際の請求書では、項目として記載することになると思われるところですが、結論、つまり○○が認められること、などと項目だけ見て分かるように記載するべきでしょう。
必要的保釈事由の該当性、などとすると、裁判官的な記載に見えます。
これは、それぞれの弁護士の考え方によるところなので、一概には言えませんが、そういった読まれ方もする可能性があることは頭の片隅に置いておくべきでしょう。
必要的保釈事由にあたること
刑訴89条1号以下に該当することを記載しましょう。
罪証隠滅については、下記裁量的保釈の項目と被るところですので、引用しやすい工夫をしながら進めるとよいでしょう。
裁量的保釈事由にあたること
裁量的保釈事由については、同法90条の本文に例示列挙されていますので、例示の範囲にある事実については、その例示の文言にそのままあてはめて記載するべきでしょう。
例示あるものとないものとで、レベルが異なるわけではないとは思いますが、どうしても条文上の文言に含まれている方が、判断する側も認めやすいと考えられますので、可能な限りひきつけて記載するべきと思います。
ただ、あまりに強引なひきつけは、文章全体を懐疑的に読ませるきっかけにもなりかねませんから留意しましょう。
そもそも認められやすい保釈請求書って?
大前提、裁判官の判断ですので、これさえすれば絶対に通る請求書というものはありません。
ただ、条文の文言もありますから、記載されている文言等に留意していくべきでしょう。
また、判断する裁判官は、弁護人が主張する事実等について目の当たりにしていません。
そこで、可能な限り、添付資料の充実化を図り、できるだけ具体的なイメージを持って判断してもらいましょう。
このように、判断権者たる裁判官が分かりやすい書面を作成することが、認められやすい保釈請求につながります。
保釈請求における判断過程
どんな申立、請求でもそうだと考えられますが、請求が通るかどうかは次のようなパターンがあります。
- 弁護士が関与しなくてもそもそも許可となる事案(申立さえすればよい事案)
- 弁護士が関与し、既にある資料・事実をほぼそのまま主張すれば許可となる事案(言えばいい事案)
- 弁護士が関与し、既にある資料・事実を、経験則等あてはめ評価し説得することで許可となる事案(評価のプレゼンが問われる事案)
- 弁護士が関与し、既にある資料等に加え、新たに資料等を収集・作成し、評価し説得することで許可となる事案(証拠収集等まで問われる事案)
およそこのように分けられると思います。
これは、判例等にあるような話ではありませんが、どんな専門家が携わる世界でも同様でしょう。
保釈請求の際には、身柄拘束の必要性について、一度検討された上での身柄拘束ですから、およそ後二者にあたることが多いでしょう。
保釈請求において求められる活動
そうすると、
- 保釈請求にあたっては、既にどんな資料等があるのかを確認
- それだけだとどんな資料等が不足するのか、
- 必要な資料等はどのようにすれば収集等できるのか、
ということを念頭に置きながら活動を開始するべきでしょう。
初めのうちは、どうしても段取りが悪くなりやすいと思いますので、大枠どのような流れで進めるべきか、最終的なゴールをどこに設定するのか意識しながら、ひとまずは着手することを早めて大事に至らないことを目標に進めていきましょう。
実際の弁護活動
上記の観点で判断したうえで、必要な弁護活動を特定します。
間に第三者機関などによる手続きが介在する場合には、できるだけ早く問い合わせておくなど相手に予測可能性を与えておきましょう。
特に身柄引受人の候補が、遠方にいる場合には、引受書の作成が、郵送でやりとりになったりもしますので、連絡だけは、先にしておく必要が高いです。
では、次に前記各項目ごとに必要になる資料を解説します。
罪証隠滅のおそれがないこと
証拠の種類としては、
- 物証
- 書証
- 人証
があります。
各証拠ごとに隠滅の態様が異なりますので、そのおそれがないことの主張の仕方も異なります。
物証・書証
物証・書証は、現物を物理的に隠されるおそれが中心になります。
そうすると、捜査機関が既に押収しているのであれば、隠すことは不可能ですし、当初は、被告人の手元にあったが、それが現在第三者の手元にあるという場合も、本人の手元に渡る可能性の低さ(皆無が望ましい。)と共に主張できます。
電磁的記録の場合には、データとして存在しますので、元データはどこにあるのか、本人が隠滅など干渉できるところにあるのか、元データから派生した媒体はあるのか、同様に干渉できるのか、というような観点が検討し、隠滅できないことを主張します。
メモ
なお、客観的・主観的の両観点から検討すると、より説得的な論証となるでしょう。
客観的な不能 本人の意思とは関係なく、現在の状況・状態から不能であるような場合
主観的な不能 本人が、隠滅したいと思う動機があるか。その証拠の存在により、量刑含め本人が不利になるかといった観点で検討。
人証
人証は、本人が干渉して口裏合わせするなどが隠滅態様として考えられます。
そこで、当該人物には、接近しない、連絡手段の抹消などが考えられます。
また、既に当該人物について、供述調書が作成されていることなども挙げられます。
逃亡のおそれがないこと
逃亡についても、客観的・主観的観点から検討します。
客観的にないこと
ここの立論はなかなか難しいです。
そのため、身元引受人や保証金で担保するというのが現実的なところです。
身元引受人については、身元引受書により主張します。
本人とどのようなつながりなのか、明示しなければ、当事者を目にしていない判断権者には分かりません。
また、単に保証金があるから逃げないというだけでは説得力が足りません。
そこで、本人や家族の収入がいくら程度で、その金額からすると、保証金の金額が占める割合は、かなり高額であることや、これを準備したのが、本人とかなり親密なもので逃亡して没収されるという迷惑をかけるわけにはいかないことにより立論していきます。
主観的にないこと
ここについても、本人が反省していることなどを反省文の添付などにより主張します。
また、執行猶予判決の可能性が高く、本人が逃亡して実刑となる場合に比して逃亡せずに出頭する方が本人にとって利益で逃亡の動機がないことなども併せて主張します。
その他
身柄拘束が長期になってくると、本人の身体的・精神的な体調に不調をきたしてくることが多いです。
また、本人ありきの会社経営などを行っており、実質的な経済的制裁となり、ひいては失職、生活の困難化により更生可能性が低下する可能性など当該事案において、着目するべき事情は意外と多くあります。
そこで、そのような事情をできるだけ条文上の文言にひきつけつつ、立論していくことになります。
裁判官面談
裁判官面談は、請求時など事前に裁判所に申し出ておけば、時間をとってもらえます。
意味合いとしては、書面では説明できない事情を説明する場という意味合いが大きいです。
書面にあることを、改めて口頭で話すというのだけではあまり有効に活用できていないと思います。
そのため、例えば、書面では書けない裁判官の雑感をさりげなく聞く場として活用するなどが考えられます。
特にそのような事情がなければ、手続を止めるだけですので、意味のある面談を目指しましょう。
おすすめの書籍
保釈請求にあたっては、意外とアイデアやひらめきが問われます。
もっとも、何でもかんでも想像していては、的外れな主張になってしまいます。
そのため、アイデア等のきっかけとなるような材料を集めておくべきでしょう。
最初のうちは、不慣れですから、できるだけ薄い参考書で、慣れるという意味でこの書籍を使用していました。
まとめ
保釈請求にあたっては、早さが求められる部分が多いです。
そのため、上記のような事項を確認して、念頭に置いた上で最初のうちは着手を早めるということを意識して進めていきましょう。
本日もお仕事がんばってください。
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