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被疑者国選事件で適切な報酬を受け取る方法を解説します(算定方法も)【国選・刑事弁護の実務】

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被疑者国選事件で適切な報酬を受け取る方法を解説します(算定方法も)【国選・刑事弁護の実務】

被疑者国選事件で適切な報酬を受け取る方法を解説します

目次

被疑者国選事件では、なかなかタイトなスケジュール感で動いていきますので、ついつい報酬の観点を忘れてしまうものです。

しかし、ボランティアで行っているわけではありませんので、そこは適切な報酬を受け取れるようにしましょう。

そこで、今回は、被疑者国選事件で、(できるだけ)適切な報酬を受け取る方法を解説していきます。

被疑者国選事件の報酬の基本

被疑者国選では、基本報酬は、接見の回数です。

そのため、可能な限り、接見に訪れることが求められます。

そこに、身柄解放ボーナスなどが加わることで、最終的な報酬が算定されていきます。

また、実費として交通費などが支払われます。

最終的に支払われる報酬等

基本報酬特別加算(ボーナス)実費

①基本報酬

基本報酬は、接見回数に応じて決まります。

弁護活動期間ごとに、基準となる接見回数が設定されており、その回数を超えると多数回接見として1回あたりの報酬額がさがります。

つまり、接見回数を多くすればするほど、同じだけ増えるわけではなく、多くなるほど1回あたりの報酬は下がることになります。

基本報酬の算定式

基準となる接見回数未満の場合

接見回数×2万円

基準となる接見回数以上の場合

(接見回数ー1)×2万円+2万6400円+多数回接見の数に応じた金額

多数回接見の数に応じた金額

多数回接見の数 金額
1万円
1万6000円
3~ 1回増えるごとに4000円プラス

※EX.3回=2万円、4回=2万4000円

弁護活動期間ごとの基準となる接見回数

弁護活動期間とは

弁護活動期間とは、最初の接見の日から任務が終了する時までの期間のことをいいます。

例えば、1月1日に受任し、当日に初回接見に行った場合で、1月10日で釈放された時には、弁護活動期間は、10日間になります。

一方、1月1日に受任したが、1月3日に初回接見を行った場合で、1月10日に釈放された時には、弁護活動期間は、8日間になります。

基準となる接見回数

弁護活動期間 基準となる接見回数
4日以下 1回
5日から8日 2回
9日から12日 3回
13日から16日 4回
17日から20日 5回
21日から25日 6回

金額的に行うべき接見回数

あまり褒められる話ではないのかもしれませんが、報酬の金額のことを考えると、行うべき接見回数は、基準となる接見回数と同じ回数行うのが、最も効率性があります。

基本報酬の増額事由

基本報酬が、通常より高くなる場合があります。

増額される場合

  • 要通訳事件
  • 遠距離接見

これらの場合が増額されます。

増額される程度

要通訳事件

上記の算定式で算出した基本報酬の金額を20%増額します。

遠距離接見

接見1回ごとに、

  • 25キロ以上離れた留置場での接見の場合は、4000円追加
  • 50キロ以上離れた留置場での接見の場合は、8000円追加

となります。

疎明資料

報酬請求時には、疎明資料として接見資料が必要になります。

もらわなかったという場合でも、報告書の提出で疎明できる場合もありますが、全部が全部ないと、実際に行った回数が認められないことにもなりかねません。

接見の受付をする際には、忘れずに、法テラスの用紙をお願いしましょう。

なお、留置場では、国選、というワードよりも法テラスというワードの方が通りがいいです。

②特別加算(ボーナス)

特別加算とは

弁護活動の結果、一定の成果が上げられた場合に、基本報酬に加えてもらうことのできる報酬です。

特別加算の種類

  1. 特別案件
  2. 身柄釈放
  3. 和解契約等
  4. 合意制度

1 特別案件

特別案件とは、いろいろと大変な事件のことです。

弁護人を威迫するような場合のことですね。

加算金額は、基本報酬の50%を加算されます。

2 身柄釈放

弁護活動の結果、被疑者の身柄が釈放された場合に、加算されます。

勾留取消請求が認められた場合などです。

加算金額は、基本報酬に5万円が追加されます。

3 和解契約等

和解契約等とは

弁護活動の結果、和解契約などが成立した場合に、加算されます。

例えば、示談が成立した場合などです。

加算金額は、基本報酬に下記の報酬が追加されます。

加算報酬金額の考え方

成果としての和解契約等に応じて、加算金額が異なります。

大まかには、損害の回復の程度が大きいほど、また、清算条項が入ることで金額が大きくなります。

また、被害者の数に応じて、金額が異なります。

下記の表は、被害者の数が1人の場合を想定して記載しています。

加算報酬金額の表

成果 金額
和解契約成立 3万円
損害全額について実質的賠償 2万円
損害全額に満たない50%以上の賠償 1万円
減刑嘆願書の作成 5000円
和解契約成立

和解契約は、清算条項が記載されていることが条件になります。

実質的賠償

供託を含みます。

そのため、被害者の住所を確認しておく必要があります。

4 合意制度

合意制度とは

合意制度とは、いわゆる司法取引です。

大まかには、被疑者等が、他人の犯罪について、証言等行うことと引き換えに、検察官が公訴提起をしないことを合意するなどの被疑者等に有利な取り扱いをする制度です。

日本では、薬物事件において、対象事件が設定されています。

薬物事件では、その犯行態様として密行性が高いという特徴から、なかなか外部からの捜査だけでは、組織の上部まで辿り着けないため、このような制度が作られています。

加算金額

  • 協議…4万円
  • 合意…1万円

③ 実費

実費について

最後に、実費が支払われます。

元々、謄写費用や切手代など、どの事件でも最低限費用がかかる部分については、基本報酬に含まれています。

そのため、通常の範囲を超えた部分について、実費が別途支給されるという取り扱いになっています。

実費の種類

地方では、よくある自車で移動して接見するという場合を想定すると次の実費が支給されます。

  1. 遠距離接見等の交通費
  2. 通訳人費用
  3. 謄写代
  4. その他

1 交通費

近場の留置場での接見には支給されません。

25キロを超える移動を伴う場合には、ガソリン代や高速料金が支給されます。

2 通訳人費用

通訳人費用は、振込みで支払った場合の振込手数料を含んだ金額と同額が支給されます。

接見の際には、何分間行ったかメモしておきましょう。

なお、最終的に実費を請求する際には、通訳人の方の署名等が必要になりますので、予め接見の際に持参し、その場で記載してもらっておく方が二度手間になりません。

通訳費用

令和3年2月現在では、次のように算定されています。

  • 30分以内…8380円
  • 30分を超える場合…10分に達するごとに1047円

そのほかに待機時間や交通費も支給されますので、きちんと確認しておきましょう。

3 謄写代

原則200枚を超える場合に、支給されます。

次の事項に留意してください。

  • 1枚20円
  • 白黒は1枚、カラーは1枚を2枚としてカウント
  • 否認事件等では、200枚までについても支給

4 その他

そのほかに、下記の実費が支給されます。

  • 出張代
  • 翻訳費用
  • 診断書
  • 弁護士会照会
  • 行政機関発行の証明書など
  • 引継ぎの場合の記録送料
  • 判決謄本交付手数料

なお、診断書以下は、あわせて3万円が上限です。

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まとめ

以上が、被疑者国選における報酬の考え方になります。

報酬ばかりに目が向いては、よくないですが、報酬を請求するにも証拠(疎明資料)が必要です。

特に、接見資料を受け取りそびれてしまうことはよくあることです。

報酬請求時点で気づいても遅いということにならないようによく確認しておきましょう。

本日もお仕事がんばってください。

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