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年金分割を単独請求で終わらせる方法 3号分割と合意分割【離婚事件の実務】

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年金分割を単独請求で終わらせる方法 3号分割と合意分割【離婚事件の実務】

年金分割を単独請求で終わらせる方法 3号分割と合意分割の違いについて解説します。【離婚事件の実務】

目次

離婚事件を扱っていると、裁判手続き外で話がまとまり、協議離婚で落ち着く場合があります。

調停により離婚が成立する場合には、年金分割についても同時に申し立てていることがほとんどでしょうから、調停条項に含まれており、これにより分割の手続きができます。

しかし、冒頭のように調停によらず成立した場合には、別途年金分割の手続きを行う必要があります。

そこで、今回は、年金分割の手続きについて確認していきましょう。

年金分割について、単独で行えることがどうして重要なのか

離婚に至る場合、円満に離婚できていれば、弁護士は介入していないでしょう。

そのため、弁護士が関与するような離婚事件の場合には、離婚の成立後は、相手方と顔を合わせたくないということが少なくありません。

そうすると、当然、年金分割についても相手の手続きなしに、つまり単独で完了したいという要望に行きつきます。

年金分割の手続きの種類

年金分割の手続きには、大きく2種類あります。

  1. 合意分割
  2. 3号分割

合意分割は、文字通り合意がなければできず、3号分割は、単独で行うことができます。

上記のような要望からすれば、できれば3号分割によりたいということになります。

1 合意分割

合意分割とは

合意分割とは、年金分割を行う当事者(元夫婦)間で年金を分割することについて、合意がある場合に行う手続きです。

基本的には、合意分割の方が、金額が大きくなります。

合意分割には、調書か合意書が必要

離婚調停による場合には、調停調書に合意が表れるため、これを持参すれば足ります。

他方、裁判手続きを経ずに離婚が成立した場合には、合意書又は元夫婦そろっての年金事務所への出頭が必要になります。

冒頭の、顔を合わせたくないという要望がある場合には、厄介です。

合意書は、単純な私文書では足りず、公証役場での公正証書化又は私署証書とする必要があります。

そのため、年金事務所又は公証役場で1度は、顔を合わせないとならないです。

そこで、3号分割によって単独で手続きを完了したいということになってきます。

2 3号分割

3号分割とは

3号分割とは、元夫婦の片方単独で年金分割の手続きを行うことができる制度です。

そもそも1号?2号?3号?

  • 第1号被保険者 自営業者等
  • 第2号被保険者 会社員・公務員
  • 第3号被保険者 第2号被保険者の配偶者

となります。

第3号被保険者は、要するに専業主婦の方などがあたります。

単独でできるなら何でも3号分割によればいいのではないか

このように単独で年金分割の手続きを完了できる点に3号分割のメリットがあります。

しかし、3号分割は、2008年4月以降の年金積立分に対してしか適用がありません。

そのため、3号被保険者(専業主婦など)に当たる場合に行うべきで、次のような場合以外には、3号分割によると請求者に不利益が生じる場合があることになります。

  • 2008年4月以降に婚姻した夫婦
  • 2008年4月より前に婚姻していたが、2008年4月以降に厚生年金に加入していた場合

合意分割によるべきか、3号分割によるべきかの判断基準

3号分割によって、何ら不利益が生じない場合には、当初から3号分割によってしまっていいでしょう。

しかし、デメリットが生じる可能性がある場合には、検討が必要です。

顔を合わせたくないという要望を重視するのであれば、多少のデメリットがあっても3号分割によるとの選択をする場合もあるでしょう。

ここで、デメリットは、年金額の多寡ということになります。

そこで、年金事務所に行き、それぞれの手続きを行った場合の試算をしてもらい、そのうえで依頼者に検討してもらうという対応が考えられるところです。

なお、50歳を超えていないと試算はできません。

弁護士は法律周辺知識に疎い

年金は、社労士さんの業務領域として関係ないと思うかもしれません。

しかし、上記で見て来たように以外と法律周辺知識もなければ急に問われた場面で困るということも少なくありません。

アドバイスできるようにまでは要求されないところではありますが、前提として頭に入れておいて損はないでしょう。

まとめ

離婚といえば、調停をすぐに思いついてしまいがちです。

そのため、裁判手続き外で話がまとまった場合には、意外と手続きに悩む場面があります。

日頃から、その手続きは、裁判所を使わなければできないものなのか、争いになっているから裁判所を使わざるを得ないだけなのか、ということを意識して考えておくとよいでしょう。

それでは、お仕事がんばってください。

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