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年金分割の手続きは段取りよく進めないと失敗する?調停・裁判外の各場合分けで解説します【離婚事件の実務】

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年金分割の手続きは段取りよく進めないと失敗する?調停・裁判外の各場合分けで解説します【離婚事件の実務】

年金分割の手続きは段取りよく進めないと失敗する?調停・裁判外の各場合分けで解説します【離婚事件の実務】

目次

離婚事件を扱っていると、離婚することのみに目が行ってしまい、意外と年金分割の調停申立をし忘れてしまいがちです。

しかし、そうなってしまうと、年金分割の調停を別途申立することになり、さらに印紙が必要になってしまうこともあります。

そこで、手続きに不慣れだったがあまりに本来、依頼者本人が負担する必要のなかった負担を強いられることとならないように、今回は、年金分割の手続きについて解説していきます。

年金分割とは

年金分割ってなんで必要なの?

離婚をする際、年金は、自動的には、分割されません。

基本的には、夫婦のうち、扶養している側が名義人となって年金を負担していきますが、負担の代わりに、老後、年金をもらうことになるのもその名義人です。

そうすると、例えば、夫婦のうち被扶養者は、自身が名義人となって年金を負担しないわけですから、老後に年金を受け取ることができなくなってしまいます。

特に、熟年離婚で専業主婦だったという場合に、本来生活の原資とするはずだった年金がごっそりなくなってしまい、生活に困ることや困ることを想定して離婚ができないということになりかねません。

そこで、できたのが年金分割の制度で、これにより、名義人となって負担していなかった側も、離婚の際に申立をすれば、名義人となって負担していた者が負担した金額の半分を分割できるようになりました。

年金分割の対象はなに?

一口に年金分割といっても、すべての年金が対象になるわけではありません。

年金分割の対象は、

  • 「厚生年金保険および共済年金の部分」
  • 「婚姻期間中の保険料納付実績」

です。そのため、

  • 婚姻前の期間
  • 国民年金
  • 将来の納付予定額

これらは、分割の対象外になります。

年金分割の期限切れで弁護士に賠償責任も

年金分割の請求期限は、離婚から2年です。

もっとも、係争中の場合には、裁判手続きが確定や成立してから1か月以内に請求しなければなりません。

弁護士がついていながら年金分割の請求期限が切れたとして、将来利益の1000万円のsン外賠償責任が認められた事案もあります。

その事案は、審判が出たあとに即時抗告となり、棄却後、許可申立をして不許可で確定した時点で分割請求したところ、棄却時点で、審判が確定しており、不許可決定時点では既に確定後1か月以上経過していたというものでした。

複雑な事案なので、通常は、出くわさないことの方がほとんどでしょうけれども、そのような責任問題ともなりかねませんので、留意しておきましょう。

年金分割の請求手続き

年金分割の請求は、調停などの裁判手続きにあるものと、協議離婚で成立した裁判手続き外のもので、手続きが異なります。

調停などの裁判手続き

離婚調停の申立時に同時に申し立てる

通常、離婚調停を申し立てる際には、附随の申立てとして年金分割の調停も申立てます。

離婚調停の申立て時に一緒に申し立てることを忘れると、申立時には、別の手続きとして扱われますので、別途収入印紙を購入しなければならなくなります。

一応、裁判所では、受付後、メインの離婚調停に併合されることは多いです。

年金分割の調停の申立て時に必要な書類

  • 年金分割のための情報通知書

が必要です。

これは、年金事務所に問い合わせて取得します。

私は、本人に取りに行かせることが多いですが、委任状を持参すれば代理人でも取得できます。

なお、年金の相談は、事前予約制になっている可能性がありますので、事前に年金事務所に相談しておく方が空ぶりしないで済むでしょう。

また、発行までに2週間ほどかかりますので、申立てることが分かっている場合には、予め取得しておきましょう。

調停成立後の年金分割の手続き

無事、年金分割の合意も含め、調停が成立したのであれば、年金分割の裏付け資料としては、調停調書があればたります。

本人が行っても、代理人がいってもいいですが、年金事務所で年金分割をしに行きます。

代理人が行う場合には、別途委任状が必要になりますので、本人に作成を依頼しましょう。

年金分割の際に必要な資料は、次のものになります。

  • 標準報酬額改定請求書
  • 請求者の年金手帳または年金基金番号通知書
  • 戸籍簿謄本(婚姻期間及び生存の確認のため)
  • 身分証明書(自動車免許証など)
  • 委任状 ※代理で行う場合

裁判手続き外で話合いがまとまった場合

年金分割のための情報通知書の取得

年金分割のための情報通知書が必要になるのは、調停の場合と同様です。

発行まで2週間ほどかかりますので、早めに取得しましょう。

なお、交付にあたって、次の各場合で通知書が相手にも交付されるかは変わります。

  • 婚姻中に通知書の請求をした場合…1人で請求した場合は、その者のみに交付
  • 婚姻中に通知書の請求をした場合…2人で請求した場合は、2人に交付
  • 離婚後の請求…相手にも交付

合意書の作成又は2人そろっての請求が必要になる

調停調書がない場合には、1人で年金分割の請求を行うことができません。

原則、2人そろっての出頭での請求になります。

1人で行う場合には、相手方との合意書が必要になります。

合意書は、私文書では足りず、公証役場で私署証書又は公正証書化しておく必要があります。

そのため、相手方とは、年金事務所の窓口又は公証役場で顔を合わせなければなりません。

そこで、弁護士を代理人として就け、代わりに出頭等し、対応することもあります。

なお、私署証書の方が、公正証書よりも安く済みます。

具体的には、私署証書は5500円、公正証書は11000円です。

弁護士は年金分割が苦手

年金分割に限らず、弁護士は、裁判手続き以外のことに弱いことが多いです。

しかし、どうしても法律周辺の知識の相談を受けることも少なくありません。

そこで、深いところまでは分からずとも、とっかかり程度は、把握しておく必要があるでしょう。

まとめ

年金分割は、単品で相談を受けることは少ないでしょう。

しかし、離婚には、年金分割はつきものですし、場合によっては、分割請求できなかったことで弁護士に相当の損害賠償責任が生じる可能性もあります。

期限には留意しながら、進めていきましょう。

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