国選事件の関係者からお礼を受け取ってはいけない!国選弁護人として行ってはいけない禁止事項を解説します【国選・刑事弁護の実務】
目次
国選事件を行っていると関係者から、お礼を渡したいと伝えられる場合があります。
しかし、これは、弁護士職務基本規程で明確に禁止されていることです。
このように、通常の弁護活動の場合と異なり、国選事件では、禁止されている行動がありますので、今回は、その解説を行っていきます。
国選事件で禁止されている事項
弁護士の職務一般に禁止されている行為として、
- 利益相反に当たる行為(法25条など)
- 守秘義務違反(法23条、規程23条など)
- 過度な事件処理の遅滞(規程35条)
- 非弁提携(法72条乃至74条、規程11条)
などは、当然のこととして、国選事件固有のものとして下記のようなことが挙げられます。
- 金銭・物品問わずのお礼などの対価の受領
- 国選事件の依頼者からの事件の受任(※解釈は弁護士による)
があります。
国選事件で気を付けるべき行為
上記のように国選事件で禁止されている事項のうち、実際には、次のような場面で問題となります。
守秘義務
問題となる場面
国選事件において弁護活動をしていると、雇い主や身元引受人の候補者から、事件のことについて聞かれることがあります。
しかし、あくまで国選弁護人は、被疑者・被告人の利益のために行動するべきですから、どこまで話してよいか迷う場面が多々あります。
特に、のちのち情状証人として法廷に立ってもらう可能性がある人物に対しては、事件のことを知ってもらったうえで、証言してもらう必要がありますので、悩ましいところです。
考えられる対応
判断基準は、本人の同意があるか否かによるでしょう。
まれに一切事件の内容を話してほしくないと希望する場合もありますが、情状証人として話してもらう人物に対しては、話さざるを得ません。
このような場合には、公開の法廷では、いずれにせよ起訴状や供述調書、被告人質問等から大方分かってしまうとして、その範囲で事前に話しても変わらないと説明して、本人の同意を得るという対応が考えられるでしょう。
私がこれまで経験した中で困ったものとして、本人が身元引受人、情状証人の候補と話していた人物としてコンタクトをとった人物に対して、判決のあとしばらくしてから、本人の判決内容や釈放後の行方について、話さないでほしいと言われたことがあり、非常に困りました。
事前に本人に事件のことを関係者に話していいということの同意、本人は、当該人物のことを友好的に考えている感触がありましたので、危ない思いをしました。
このように話すことが転々としたり、大体で話したりする者も少なくないので、本人から同意を得ている範囲か否かについては、慎重に考えるべきでしょう。
お礼などの対価受領
問題となる場面
親族の方や雇用主の方から、お土産などを渡したいと言われる場合があります。
また、事件解決がうまくいき、判決に対して非常に満足してくれた場合に、金銭を渡したいと希望されることもあります。
考えられる対応
金銭を受領することは、御法度ですが、菓子折りなどのお土産はなかなか対応に困ります。
「菓子折りなどの軽微なものなら…」
「せっかく持ってきてくれたのに無下に返すのも逆に失礼かも…」
など悩ましい場面です。
しかし、例えば判決が出る前ですと、後々判決に満足されなかった場合に、足元を見られる可能性があります。
また、判決に満足してくれてどうしても渡したいと言われる場合にも、他の場所で不意にその事情が表に出る可能性も否定できません。
国選弁護人は、公的な立場で活動する以上は、弁護士のルールだからということを説明し、かえって失礼にはなるかもしれないがとしてお断りする対応が無難でしょう。
被疑者・被告人からの事件受任
問題となる場面
被疑者・被告人から、国選だと動きづらいだろうということで私選への切り替えの打診を受けることがあります。
また、当該刑事事件とは別途、更生環境整理の一環として債務整理や自己破産の手続きが必要になる場合があります。
考えられる対応
私選への切り替えで、国選弁護人と同一の弁護士が就任することは、規程49条に明確に違反するところでしょう。
他方、関連事件が発生する時が悩ましい場面です。
ここは、弁護士ごとに見解が異なるところです。
色々な見解があるところで、実際には、どう転ぶか分からないから受任はしない、又は無償で行うということに落ち着くのではないでしょうか。
また、知り合いや同期に受任の打診をするという対応が推奨されるところです。
もっとも、事件処理の速さの観点や差し迫った事情があるということから、どうしてもということもあり得るところです。
あまりおすすめはできませんが、関連性の程度や金銭の多寡により、規程49条を潜脱することにならないような対応を心がけて対応するべきでしょう。
裁判の情状事実として利用する場合にも、手続きに入っていることを報告書等で裁判に顕出できればいいということもありますので、受任の必要性については、慎重に考えるべきです。
現実には、困っている人を目の当たりにするわけですし、助けてあげたいという気持ちにもなりますが、その瞬間に切迫していることから頼まれるということも往々にしてありますので、自分の身と比較衡量して対応するべきです。
おすすめの書籍
弁護士倫理の書籍としては、研修所で渡された逐条解説のものしかないという方も多いのではないでしょうか。
日々の業務には直接には役に立たないと軽視しがちですが、自分の身を守るための武器になるものでもあります。
そのため、新しめの書籍も1冊読んでおくと安心でしょう。
まとめ
国選弁護人としてはやってはいけないことを確認していきました。
なかなか悩ましい場面も多いですが、国選事件は公的な立場として行っているということを念頭に置いて活動すれば、活動の指針となるでしょう。
それでは、本日もお仕事がんばってください。
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