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算定式を用いて3ステップで養育費を算定する方法を解説ー養育費の算定表で算定ができない場合の算定方法【離婚事件の実務②】

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算定式を用いて3ステップで養育費を算定する方法を解説ー養育費の算定表で算定ができない場合の算定方法【離婚事件の実務②】

養育費の算定表で算定ができない場合の算定方法

目次

養育費の事件を扱っていると、子供の人数が4人以上など算定表では、算定できない場合があります。

また、算定表で算出できた相場の幅よりも詳細に算定したいという場合もあります。

そこで、今回は、養育費の算定表ではなく、きちんと算定式を利用して算出する場合について確認していきましょう。

なお、算定表を用いた場合の算定方法は、以下の記事で解説しています。

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養育費の算定式

養育費の算定は、次の算定式に、各項目の数値をあてはめると算定することができます。

  • 子の生活費×(義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入))

これだけ見ても、現時点では分からないのは、当然ですので、ひとつひとつ要素ごとに分解して説明していきます。

このブログについて

このブログでは、新人・若手の弁護士の方向けに実務の動き方、運用などをお伝えし、少しでも早く弁護士業務に慣れてもらえるように記事を作成していきます。よかったらブックマークなどして頂けると嬉しいです。

それでは、早速中身に入っていきましょう!

養育費算定の大枠3ステップ

3段階を経て算定することになります。

  1. 権利者・義務者の基礎収入の算定
  2. 子供の生活費の算定
  3. 義務者の負担するべき養育費の算定

そして、この各ステップにさらに細かいステップを踏んで算出していくことになります。

これから説明していきますね。

①権利者・義務者の基礎収入の算定

基礎収入とは、各人の総収入から、公租公課や住居費を差し引いたものです。

わかりやすくいうと、自分の収入の中で実際に自由に使えるお金のことです。

基礎収入の算定式は、次の通りです。

  • 基礎収入=総収入×基礎収入割合

この式にあてはめる各項目の算定・特定にあたっては、次の3ステップを通ります。

  • A 権利者・義務者の総収入の確認
  • B 総収入から適用するべき基礎収入割合を特定
  • C 総収入に基礎収入割合を掛けて、基礎収入を算出

A 権利者・義務者の総収入の確認

権利者・義務者とは

まず、権利者・義務者とは何なのかから確認しましょう。

権利者とは、養育費を請求する者です。要するに、親権者です。

義務者とは、養育費の請求を受ける者です。要するに、親権を有さない者です。

総収入とは

次に、総収入は、給与所得者(サラリーマンなど)、事業所得者などで見るべき項目が異なります。

  • 給与所得者…源泉徴収票の支払金額
  • 事業所得者…確定申告書の課税所得+実際には支出されていない控除額

事業所得者の場合には、実際には、支出されていないものの、税金上控除される金額があります。

そのため、このような取扱いをしなければ適切な収入が把握できないために上記の扱いをします。

B 総収入から適用するべき基礎収入割合を特定

基礎収入割合とは

基礎収入割合は、上記のように算定した総収入に対して、一律の割合をかけることで、容易に課税等差し引いたあとの手取りを把握するための割合です。

つまり、この基礎収入割合を総収入にかければ、総収入から平均的な租税公課や住居費を差し引いた金額が算出できるのです。

基礎収入割合の数値

基礎収入割合は、次の通りです。

給与所得者の場合
総収入
~75万円 54
~100万円 50
~125万円 46
~175万円 44
~275万円 43
~525万円 42
~725万円 41
~1325万円 40
事業所得者の場合
総収入
~66万円 61
~82万円 60
~98万円 59
~256万円 58
~349万円 57
~392万円 56
~496万円 55
~563万円 54
~784万円 53
~942万円 52
~1046万円 51
実額を差し引くべきとの主張

上記の割合は、あくまで平均的な租税公課等の差し引きを簡易迅速に算定するための基準です。

そのため、平均とは異なる事情があるために、実際の金額を差し引くべきと主張も成り立ちます。

しかし、今回の記事では、原則論の確認が趣旨ですので、そのような応用論は、また別記事で解説しようと思います

なお、2019.12にこの指数の取扱いは変更されていますので、それより前の資料等参照する時には気をつけてください。

②子供の生活費を算定

子供の生活費とは、養育費の義務者が、仮に養育費を負担する子供と同居していたとして、負担するべき生活費はいくらなのかというものです。次の算定式で算定できます。

  • 子の生活費=義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数))

子どもの生活指数

子供の生活指数とは、成人が必要とする生活費の指数を100とした場合の子の生活費の指数です。 14歳以下か、15歳以上かで異なります。

  • 14歳以下…62
  • 15歳以上…85

義務者の生活指数

義務者は、成人ですから、100となります。

③義務者の負担するべき養育費の算定

最後に、これまで算定してきた項目をまとめて、養育費を算定します。

この金額を、各人の立場で主張するということになります。

算定式は、次の通りです。

年額

  • 子の生活費×(義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入))

月額

  • 年額÷12

まとめ

以上のフローに乗っかれば、養育費を算定することができます。

もっとも、争いが深刻な場合には、それぞれの立場に立った主張を行う必要があります。

例えば、上記では、基礎収入について、総収入に平均的な基礎収入割合を掛けることで、簡易に算出していますが、総収入から実額を差し引くべきとの主張などがあります。

おすすめの本

このような例外的主張をする場合や、これまでの解説をまとまって読みたいという場合には、下記の本がおすすめです。

各項目の基本的考え方から始まり、例外的主張をする場合の主張方法と裁判例でどう判断されたのかが簡潔にまとまっており、とっかかりを得ることができます。参考にしてみてください。

 

それでは、本日もお仕事がんばってください!

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