養育費の算定方法ー養育費の考え方、算定表の見方、算定表で出した相場の扱い方
目次
離婚事件を扱う時に、養育費を請求する側では、緊急的に請求しなければならないことが少なくありません。
例えば、養育費請求の調停を申し立て、認められた場合、申し立てをした時点からであることが多いです。
そうすると、相談を受け受任し、事件にとりかかる場合は、できるだけ早く申し立てを行う必要があります。
そのため、養育費の相場(基本の額)の算定は、その場でできるようになっておかなければ、適切な事件解決ができないでしょう。
そこで、今回は、養育費の考え方から入り、算定表がある場合にはその参照方法と有利な主張の立て方を確認していき、迅速な事件対応をできるようにしていきましょう。
なお、養育費の算定表では算出できない場合の算定方法は別記事で解説します。
このブログについて
このブログでは、新人・若手の弁護士の方向けに実務の動き方、運用などをお伝えし、少しでも早く弁護士業務に慣れてもらえるように記事を作成していきます。よかったらブックマークなどして頂けると嬉しいです。
それでは、早速中身に入っていきましょう!
養育費の考え方を理解しておく必要性
まず養育費の考え方を理解しておく必要があります。
なぜなら、養育費の考え方が理解できていないと、算定表が使えるパターン・使えないパターンの区別ができなかったり、使えないパターンでの算出が適切にできなかったりするためです。
養育費とは
養育費とは、未成熟子が社会人として自立するまでにかかる監護費用などのことをいいます。
要するに、20歳まで子供を育てるための費用を元配偶者(親権を持たない)に対し、請求する費用のことです。
養育義務は、親であれば親権がなくとも負担するため、そのことを根拠に請求できるというわけです。
養育費の算定表の考え方
養育費の算出にあたり、大体の目安として相場を決める必要があります。
毎回算出していては、迅速な権利実現が妨げられてしまうためです。
そこで、日本の平均的な家庭を前提に、通常差し引かれる税金等を差し引いた上、負担可能な養育費を算出できるよう作成されたのが、養育費の算定表です。
養育費算定表の見方
算定表の役割
養育費算定にあたり、基本的には算定表により出すことのできる相場が基準になります。
この相場が、話し合いのベースになり、例えば、子供が海外の高校に入学し、通常の子供以上に教育費がかかる場合など、その相場の例外事情として主張していくということになります。
この算定表は、裁判所のサイトでダウンロードすることができます。
※裁判所のサイト
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
どの算定表を参照すればいいか
算定表を参照する際には、以下の事情で当該事案にあてはまる条件を選択します。
- 子供が何人か
- 各子供が14歳以下か、15歳以上か
それぞれの条件を選択すると、参照するべき表がわかります。
算定表は、子供が3人までの場合までしか対応していませんので、4人以上の場合には、後述の算定式で算出する必要があります。
算定表の見方
算定表は、請求する側(権利者)の年収と支払う側(義務者)の年収を選択すると相場の幅が分かります。
この年収は、自営の場合と給与所得の場合とで異なる列を見ることになりますので、気をつけましょう。
上記のように、養育費の幅が出てくることになります。
実際に選択してみて、該当する幅の部分を見ると、さらにその幅の中で、該当部分がわかります。
具体例
例えば、幅が5-8万円として出てきた場合に、その幅の中の上の方であれば、8万円に近い金額が相場ということになりますし、幅の中の下の方であれば、5万円に近い金額ということになります。
また、相手の給与に変動があったり、正確に分からない場合には、さらに幅同士を組み合わせて参照する必要があります。
例えば、相手の収入がAの場合で算出すると5-8万円、相手の収入がBの場合で算出すると6-9万円ということだとすると、5-9万円が相場ということになるでしょう。
有利な主張の立て方
このように算定した相場の中で、有利な主張は次の通りです。
- 請求する側…高い金額
- 請求を受ける側…低い金額
請求する側の主張の立て方
請求する側では、できるだけ高い金額で認められるよう求めるのが弁護活動になります。
まず、相場では、一定の幅が出てきますが、その幅の中で高い金額に位置することを主張することから始まります。
そのため、5〜8万円という幅が出てきたという場合には、8万円で認められるべきだと考えていきます。
その際には、例えば本当は相手の収入がもっとあるはずだ、などが主張内容になるでしょう。
次に、その幅を超えた主張をする場合には、算定表の幅では妥当ではない特別の事情を主張していくことになります。
例えば、特別の事情として、子供が私立の中学に行くことや、持病などにより高額の医療費がかかることなどが考えられます。
請求を受ける側の主張の立て方
請求を受ける側では、低額で認められるべきだと求めるのが弁護活動になります。
まず、幅の中でも低い金額とするべきだと考えるところです。
例えば、相手が働けないと主張している際に、潜在的稼働能力があるはずだと主張することが考えられます。
次に、特別の事情が出てきた際に、これを否定する事情の主張があります。
例えば、私立の中学に入学することになっており、公立中学という一般的として算定表で前提としている教育費以上の金額がかかるという主張に対し、当該私立中学校は、算定表で想定している教育費とは、それほど金額として遜色ないことを主張することなどが考えられます。
おすすめの本
養育費の基本的な考え方についてよくまとまっているのが、次の本です。
改正前の本なので、その点だけは留意する必要がありますが、基本からよくある例外的主張の項目と裁判例が簡潔にまとまっており読みやすいです。
ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
このように、算定表はあくまで相場であるため、何かこちらに有利な例外事情はないか、ということを探し、積極的に主張していく姿勢が求められます。
こちらの記事では、そのような例外的事情の主張をする場合に使用する算定式での計算方法を解説しています。
-
訴状に記載する訴額、貼用印紙、予納郵券の調べ方【法律事務の実務】
訴状に記載する訴訟物の価額、貼用印紙、予納郵券の調べ方目次 訴状や申立書を作成する際に、必ず記載するのが、 訴訟物の価額 貼用印紙 予納郵券 の金額です。 初め ...
続きを見る
今日もお仕事がんばってください!
-
【21年最新】新人町弁におすすめの書籍6選|相談会に臨む前の不安解消
新人町弁におすすめの書籍|相談会に臨む前の不安解消目次 町弁が扱う事件分野は、多岐にわたります。 新人の先生方が最初に1人で相談を受けるのが、無料相談会というこ ...
続きを見る