自己破産の初動対応
目次
町弁をやっていると、いまなお自己破産で相談に来られるお客様は多いです。
自己破産の事件は、
- 自己破産相当か否かの見極め
- 債務承認関係の文言の配慮
- 状況の整理
- 費用の捻出方法
などを意識することがポイントです。
債権者が多くなってくると、事案を把握することが難しい面もありますが、基本的には申立手続きですので、ほとんどやることは決まっています。
最初は大変ですが、1度一通りの手続きを経験してしまえば、以降はある程度定型的に動くこともできるようになりますので、以下で初動対応を確認していきましょう。
相談から受任通知発送までの流れ
受任通知発送までは、
- 初回相談の予約受付、持参書類の伝達
- 初回相談
- (法テラスの申込)
- 受任通知の発送(事件への着手)
という流れになります。
お金がないから借りてしまったということがほとんどですので、法テラスに介入してもらう事案が多いです。
その場合は、法テラスの手続きが入りますので、少し手続きが大変になります。
初回相談の予約受付、持参書類の伝達
初回相談の予約を受けたら、初回相談時に持参してもらいたい資料を伝えるとともに
任意整理か自己破産かその時点でのおおよその見込みを確認しておきましょう。
確実に用意してもらいたい資料
- 請求書の持参(債権者からの資料一式∵債権者が誰か知りたい)
- 印鑑(委任状、法テラス申込書作成のため)
あると助かる資料
以下の資料はあると助かる資料です。
法テラスに申し込む際に必要になるのが基本ですが、収入状況を把握するためにも利用できます。
- 給与明細ー直近2か月分
- 賞与明細書ー直近2回分
- 源泉徴収票ー直近の
- 通帳の写しー直近2年分のすべての口座(最終的には申立時に必要ですが、お金の動きが把握できます。)
法テラスを利用する場合に必要な書類
上記の資料に加えて、法テラスを利用する場合には、下記の資料が必要になります。
- 住民票(本籍、筆頭者、続柄、世帯全員、申込から3か月以内)
- 非課税証明書 ※収入ない場合
- 無資産証明書 ※収入ない場合
初回相談
初回相談で説明するべき事項
初回相談では、破産制度の説明(任意整理の交渉の話)や法テラスの制度の説明をします。
- 法テラス経由の場合は、申請通ってからでないと動けない ※1
- 受任通知送り、請求来なくなっても支払義務がなくなったわけではない ※2
- 債権者(特に銀行)の口座や相殺対象になる債権がある場合は、引き落としておいた方がいい ※3
- 自己破産した場合のデメリット(ローン7年くらい組めない) ※4
- 申立書に記載しない債務は、免責対象にならない ※5
※1 事務所によって方針が異なりますが、法テラスの審査が通らなかった場合に受任できないということであれば、受任通知等その後の手続きはしない方がいいでしょう。通らない場合でもなんとかなるのであれば、特に気にせず受任していいと思います。
※2 この点は、よく説明しておかないと支払が止まったことで安心してしまい、連絡が取れなくなるなどの危険性があります。
※3 ここも事務所により方針は異なりますが、カードローンを受けた銀行が給料口座の場合など、受任通知送付により、給料が入金されるたびに相殺される可能性があります。
※4 よく友人などに知られたくないとの相談を受けますが、官報に掲載されるだけなので、ほとんど知られることはありません程度の話をしています。ローンは7年くらい組めなくなるので、スマホなども一括での購入になります。車もです。
※5 せっかく免責決定が出ても記載漏れがあると、その債務については免責されないことになってしまいます。弁護士も注意する必要がありますが、一番わかっているのは本人なので、本人に自覚してもらいましょう。
初回相談で確認するべき事項
初回相談で確認するべき事項は、今後の方針を検討するために必要な事項を聴取しつつ、受任するべきか判断するための事項です。
- 債権者の数
- 借り始めたきっかけ、時期
- 返済不能になった経緯
- 自己破産Or任意整理の方向性(※再生含む)
この辺りを確認できればおおよその方針は検討できるでしょう。
本人の希望は聞きながら検討します。
どうしても破産ができない事案であれば、再生の方向性も見えてくるでしょう。
初回相談で作成するべき書類
初回相談で受任の方向で検討する場合は、下記の書類を作成しておくと後がラクです。
受任通知など発送するにしても、委任状が前提になるからです。
法テラス経由でない場合
- 白紙委任状、訴訟委任状
- 委任契約書
法テラス経由の場合
- 法テラス民事扶助申込書 ※相談時間横と、内容面に各「署名」部分
- 資力申告書
法テラス経由の場合は、委任契約書の作成は不要です。
金銭面での契約は、法テラスとの三者契約になるためです。
法テラス経由の場合に用意を頼む書類
法テラス経由の場合は、次の書類を持参してもらいましょう。
- 住民票(本籍、筆頭者、続柄、世帯全員、申込から3か月以内)
- 非課税証明書 ※収入ない場合
- 無資産証明書 ※収入ない場合
法テラスの申込
法テラスに申し込む場合に作成する書類、添付する書類を確認します。
作成書類
法テラスに申し込む際に作成する書類は、次の通りです。
- 申込書
- 相談票
- 事件調書
- 債権者一覧
本人の署名が必要な部分は、前記の通りですが、忘れがちで忘れると二度手間になります。
添付書類
法テラスに申し込む際に添付する書類は、次の通りです。
- 住民票(本籍、筆頭者、続柄、世帯全員、申込から3か月以内)
- 非課税証明書 ※収入ない場合
- 無資産証明書 ※収入ない場合
- 直近2か月程度の給与明細(法テラスの申込手続きに入れる)
- 直近2回分の賞与明細書
- 直近の源泉徴収票
法テラスの申込が通った時点で作成する書類
法テラスに申込が通るとその時点で、以下の書類を作成します。
期限は、決定後1か月以内です。
- 個別契約書 3通
- 重要事項説明書 2通
- 償還金口座登録用紙 1通
これらの書類は、申込が通ったことと同時に郵送にて送られてきます。
受任通知の発送(事件への着手)
法テラス関係の手続きが終了、または法テラスを通さず直接の委任契約の締結が完了したあとは、事件に着手します。
それぞれの債権者に対し、受任通知を発送します。
発送方法
基本的には、郵送です。
この点は、FAXや配達証明付きなど色々と考えがあると思いますが、私は、原則普通郵便で送っています。
あとで受任通知の発送の有無や時期が問題となりそうな事案の場合には、配達証明付きなどを検討します。
受任通知の内容
文言は基本的に定型的なもので問題ないですが、最初に作成する際には、文言に留意しましょう。
特に、「債務承認」には留意し、時効中断などで問題が生じた場合の弁護過誤を防ぎましょう。
法テラスへの着手の報告
法テラス経由の場合、事件に着手した時点で、
着手報告書
を個別契約書提出後3か月以内に提出する
必要があります。
法テラス関係は、忘れがちな手続きですので、気をつけてください。
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まとめ
以上までで、自己破産(任意整理)事件の受任通知を発送するまでの手続きを確認しました。
法テラスを通す場合には、手続きが複雑になりますが、一度経験してしまえば、定型的な動きができ、効率的に動けるようになります。
最初が大変ですので、がんばりましょう。
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