相続財産が発覚した場合の対応
目次
自己破産の事件を受任して、当初は、
- 債権会社数社で明らかな債務超過状態、
- 特に過払いもなさそう、
- 見るべき資産もない、
という事情だろうと進めていたところ、相続財産が発覚し、複雑になるという場面は少なくありません。
今回は、そんな場合にどのように対応しようか、ということをお話しします。
相続財産があると、資産ありとして同時廃止は難しい
このような場合、結論から述べると、資産があることには変わりないので、同時廃止ではなく、管財事件になってしまいます。
そのため、額次第ですが、少額管財であれば、20~30万円程度の予納金が申立の際に必要になってきます。
しかし、そもそもお金がなくて自己破産ということですから、予納金を積むのもなかなかできない状態です。
この点で、困難な事件になるのですが、裁判所の破産部に行き、交渉することになります。
具体的には、
- 減額、
- 分割、
- 猶予
です。
基本的には、申立と同時にではなく、手続きの進行に応じて積むということが多いでしょう。
相続財産の調査
債務者に相続財産があることが発覚した場合、被相続人名義のままであるということが多いです。本人も相続したことに気づいてないからですね。
そのため、通常の相続事件と同様に、関係情報を集めなければなりません。
具体的には、
- 遺言の有無
- 相続人の範囲
- 遺産の範囲
です。
したがって、遺言の有無を公証役場等に問合せ、戸籍を収集し、不動産の登記簿謄本などを収集することになります。
役所の手続きが入ることになるため、遠方の役所の場合は、順序を踏まえて迅速に請求しましょう。
何代も前の相続が絡んでくることが少なくない
このようにして発覚した相続財産は、相続手続きが何代もなされていないということが多いです。
そのため、名義を見ても、債務者が誰のことかは分からないが、おそらく自分の親族ということがあります。
その場合、相続している可能性のある不動産すべてについて、
- 不動産登記簿謄本の所有名義が誰になっているか特定し、
- その名義人について、それぞれ出生から死亡までの戸籍・除籍を取得します。
そのなかで、明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に相続が開始している場合には、家督相続になるため、現行民法とは異なる相続方法になります。
何代も前の相続を調査する際には、気を付けましょう。
相続財産の固定資産税評価証明書を取得
最後に、相続していた財産の価値を調査する必要があります。
そこで、役所において、固定資産評価証明書を取得しましょう。
そして、同時廃止ができない程度の価値を有している場合は、原則管財事件となります、
まとめ
以上のように、当初、比較的容易な事件に見えていたとしても、途中で、複雑な事件に変わることがあります。
すこし面食らうところではありますが、そのようなケースもあることを前提に、初回相談を受けるという姿勢が必要になります。
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