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【相続事件の実務】相続人・遺産・遺言の調査方法【初動対応】

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【相続事件の実務】相続人・遺産・遺言の調査方法【初動対応】

相続事件の初動対応はどうすればいいの?

目次

 今回は、相続事件の初動対応についてお話していきます。

 相続事件では、まずは関係者と分け合う財産の対象を画定する必要があります。

 そこで、

  1. 遺言の有無
  2. 相続人の範囲
  3. 遺産の範囲

を調査し、特定しなければなりません。

 要するに、

  1. 亡くなられた方(被相続人)の生前の意思は残っているのか
  2. 誰と誰の間で財産を分け合うのか
  3. 分け合う財産には何があるのか

を確認します。

 相続事件は、関係者が複数人に渡るうえ、財産の額も多額、各財産の評価で争うなど複雑になりやすい類型です。

 そのため、しっかりと整理して、段取りを踏んで対応することが求められます。

 それでは、さっそく調査方法を確認していきましょう。

1 遺言の有無の確認

最初に遺言があるか確認しよう

 相続事件を扱うにあたって、まずは被相続人が遺言を残していないか確認しましょう。

 遺言がある場合、その遺言が有効であることを前提とすると、基本的には、その遺言の通りに相続します。

 遺産の分割の話し合いなどしている最中に、遺言が見つかってしまうとイチからやり直しになってしまいます。

 そのため、遺言があるかどうかは、一番最初に確認しましょう。

遺言はどうやって確認すればいいの?

 遺言の種類は、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言

の2種類あります。

 自筆証書遺言は、一定の形式に従って自筆で作成した遺言のことです。

 他方、公正証書遺言は、公証人役場で公証人の立会のもと作成した遺言のことです。

 そして、それぞれの遺言が存在し得る場所は、次の通りです。

自筆証書遺言の保管場所

 自筆証書遺言は

  • 被相続人の自宅の自室や金庫の中
  • 法務局(自筆証書遺言保管制度)

に保管されている可能性があります。

 前者は、相続人や依頼者の想像に任せるところが大きいです。どこにあるのか、分からないことが多いです。

 そこで制度化されたのが、後者です。

 後者は、これまで本人の意思を反映していない、偽物だ、などと争いが絶えなかった自筆証書遺言について、法務局で保管することで本人の作成であることを担保しようという制度です。

 そのため、後者で作成された可能性がある場合には、法務局において問い合わせることで確認することができます。

 なお、詳しい確認方法は別記事にします。

公正証書遺言の保管場所

 公正証書遺言は、公証人役場に保管されています。

 公証人役場に問い合わせれば確認できます。

 なお、詳しい確認方法は別記事にします。

確認した結果、遺言が見つかった場合

 確認作業が終わり、遺言が見つかった場合、

  • 遺言の内容が依頼者にとって有利な場合
  • 遺言の内容が依頼者にとって不利な場合

でそれぞれ今後の方針が変わります。

 すなわち、下記の争うべき点を不利なら争い、有利なら争われた場合の対応を検討するということになるでしょう。

  • 遺言が有効か(形式要件、実質要件の充足の有無)
  • 遺留分減殺請求

 なお、それぞれの争い方は別記事にします。

確認したけど、どうやら遺言がなさそうな場合

 確認作業が終わったあと、遺言はなさそうだということになった場合、次の2つの道があります。

  • 法定相続分による相続を進める
  • 遺産分割協議により、話し合いで財産を分ける

の2つの道です。

 それぞれの解決ルートの解説は別記事にします。

2.相続人の範囲の調査

相続人の範囲はどうして調査が必要なの?

 相続人の範囲の調査は、

  • 法定相続分での相続をする場合に、そもそも誰が相続するのか、その人がどの程度相続するのかの確認のため
  • 遺産分割協議をする場合に、あとで本当は相続人だったという人が現れて協議を無駄にしないため
  • 遺産分割協議を調停で行う場合に、申立てをするため

に必要になります。

相続人の範囲の調査方法

 相続人の範囲の調査は、被相続人の戸籍を辿ることによって行います。

 具体的には、被相続人が「生まれてから亡くなるまで」の戸籍を全て集めるということになります。言い回しとして、「出生から死亡まで」とも表現します。

 方法としては、

  • 被相続人の死亡地の役所の戸籍課に、被相続人の「出生から死亡まで」の全戸籍謄本の職務上請求(依頼者が自分で請求も可)をかけます。
  • それでも全て集まらない場合は、入手できた戸籍の最も古い戸籍謄本で、どこの戸籍からその戸籍に転籍したのかを確認する。
  • 転籍前の本籍地の役場の戸籍課に「出生から転籍まで」の全戸籍謄本の職務上請求(依頼者が自分で請求も可)をかける。
  • まだ集まりきらない場合は、再度入手した戸籍謄本の中で最も古い戸籍から同様の作業を行う。

ということになります。

 なお、戸籍を請求する際の詳しい方法などは別記事にします。

遺産の範囲の調査方法

どうして遺産の範囲を調査する必要があるの?

 

遺産の種類にはどんなものがあるの?

 遺産の種類には、ざっくりと

  • プラスの財産
  • マイナスの財産

があります。マイナスの財産が多いということであれば、相続放棄という道も見えてきます。

 プラスの財産には、

  • 現金
  • 預金
  • 不動産(土地、建物など)
  • 有価証券(株など)
  • 自働車

 ここでは、実務上よくある現金、預金、不動産、負債について調査方法を確認しましょう。

遺産の種類それぞれの調査はどうやって行えばいいの?

現金

 現金は、被相続人の自宅にあることが多いです。また、生前贈与として特別受益に算定すべき形に変わっている可能性もありますので、いつ、だれに、どんな名目で手渡されたのか、など詳しく聞き取り、陳述書化することもあり得ます。

預金

 預金に関しては、相続人の中に独り占めしようとしている者がいたり、調停を使用という場合には調査すべき対象が異なります。

預金ー争いがない場合

 被相続人の各口座の残高証明書の発行で足りるでしょう。

預金ー争いがある場合

 被相続人の各口座のお金の動きを追っていく必要があります。

 例えば、途中で、多額のお金が引き下ろされ、その周辺で相続人の一人が事業を始めたということであれば、元手になっている可能性もあるということなどがあるからです。

 そのため、各銀行に取引履歴の開示を行う必要があります。

 取引履歴の開示の際には、早さや距離の関係で、依頼者と弁護人どちらが取り寄せるのか要検討です。

 また、取引履歴の開示の際に、どのような書類が必要なのかは各銀行で異なりますが、多くの銀行で次の書類は必要でしょう。

  • 被相続人の最後の除籍謄本
  • 依頼者の戸籍謄本…除籍謄本と併せて「相続人であること」が銀行に分かります
  • 依頼者の印鑑登録証明書
  • 証明書に対応する実印
  • 依頼者の身分証明書(免許証など)
  • 委任状…相続関係調査をしていることが銀行に分かります

 銀行において、準備したり、必要な書類が異なり、こちらで用意する時間がかかったりします。

 そのため、なるべく早い段階で銀行に問い合わせ、スムーズに開示できるように動きましょう。

 なお、より詳しい解説は別記事にします。

不動産

 不動産については、

  • 被相続人の所有不動産に何があるか
  • 不動産がどこにあるのか
  • その不動産の価値はいくらか

ということを調査する必要があります。

 まず、これから述べる資料の請求には、職務上請求がありません。

 そのため、各役場のサイトで確認して、「相続関係調査のための委任状」が必要になります。

 そして、所有不動産の調査は、名寄帳のコピーを行う必要があります。

 名寄帳には、被相続人の名義の不動産の一覧が載っています。

 次に、不動産の所在については、登記簿謄本を請求することになります。

 最後に、不動産の価値は、固定資産評価証明書を請求することになります。

まとめ

 以上で相続関係の調査方法になります。

 相続事件を扱うにあたっては、まず上記の調査を迅速に行い、方針を立てる必要があります。

 このようにして、相続関係の調査が完了したら、個別の事件の検討しましょう。

 個別の事件の検討プロセスなども別記事にまとめますので、興味があれば読んでみてください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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