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弁護士費用ってどうやって算定すればいいの?経済的利益ってなに?(民事編)【法律相談の実務】

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弁護士費用ってどうやって算定すればいいの?経済的利益ってなに?(民事編)【法律相談の実務】

【新人弁護士の初動】報酬算定の方法

目次

今回は、新人弁護士が躓きやすい報酬算定の方法を解説します。

報酬規程は、既に廃止されていますが、多くの事務所が、弁護士報酬規程を参考にして算定しています。

※(旧)弁護士報酬基準

https://senbayashi-lf.com/cms/wp-content/uploads/2019/02/pdf001.pdf

そこで、弁護士報酬規程における報酬の算定の大枠を、確認していきましょう。

なお、所属事務所において独自の基準を採用している事務所もありますが、元は報酬規程を参考にして作成しているでしょうから、基本を知るという意味において確認しておくことは有益と思います。

弁護士報酬の構成

弁護士報酬は、大きく3種類で構成される

弁護士報酬という場合、

  • 着手金
  • 成功報酬
  • その他日当、実費など

から構成されています。

着手金

着手金は、弁護士が事件に手を付ける(着手する)場合に、頂戴する費用です。

これは、事件解決の成功の有無にかかわらず、いただくもので、一番最初に頂く費用になります。

完全勝訴した(成功した)場合には、費用のおおよそ3分の1を構成する費用になります。

事件解決の有無にかかわらず頂くものですから、仮に事件解決に失敗したとしても頂戴する費用になります。

そのため、そのように失敗したり、依頼者の経済的には何ら進展がないように感じるような事件においては、最初に返還しないお金であることの説明を十分しておくべきでしょう。トラブルのもととなり得ます。

成功報酬

弁護士が事件解決にあたり、成功した程度に応じて頂戴する費用になります。

完全に解決した場合には、おおよそ費用全体の3分の2を占める費用と考えておけばよいでしょう。

大きく解決した場合にはいただきやすいですが、少しあるいはあまり進展がなかった場合には、いただきにくい費用です。

そのような場合に、本当に頂戴するかどうかは事務所や当該弁護士次第というところになりますが、事件に着手する際に、十分な説明を、明確な算定方法を交えて説明しておくべきでしょう。

新人の先生方は、まだ十分に事件全体の見通しを立てることは難しいと思いますが、可能な限り、様々な事件進展を想定したうえで、場合分けなどして説明しておくと依頼者に親切でしょう。

その他日当や実費など

日当

1日、半日、1回など基準は様々ですが、1期日出頭ごと5万円などのように遠方の裁判所の場合などに設定する費用です。

移動時間に弁護士が他の作業ができないという不利益の補填の意味や、成功報酬算定が困難な事件でわかりやすく算定する意味などがあります。

実費

弁護士が事件解決を遂行するにあたり、必要になる実費のことです。

具体的には、切手や収入印紙、交通費などがあります。

申立費用などは、弁護士が就いても就かなくても依頼者が負担して申立てるということを踏まえれば、依頼者が負担するものとして理解しやすいかもしれません。

また、事務所ごとに異なります。

  • 実費相当額を予め預かり、費用清算の段階で報酬等を差し引いて残金を依頼者に返還するというスタイルの事務所
  • 清算時に報酬等と共に請求するというスタイルの事務所

などあります。

報酬の算定の仕方は大きく4種類

報酬の算定にあたっては、パターンが大きく2種類あります。

ここでいう報酬は、着手金及び成功報酬を念頭に置いています。

  • 請求の金額が算定できるもの
  • 請求の金額が算定できないもの

で別れます。

そして、後者の算定できないもののなかで

  • 請求の金額を擬制するもの
  • 請求の金額に関わらず、一定の幅の中で決めるもの
  • タイムチャージ方式

に分かれます。

経済的利益という概念

ここで、前提として、上記請求の金額というのは、全て「経済的利益」という概念に集約されます。

その請求を行う上で、依頼者の経済的な利益はいくら相当になるのか、ということを考えていくわけです。

請求の金額が算定できるもの

例えば、Xが、Yに、不動産を1000万円で売ったのに、Yが支払をしない。

そこで、Xが、Yに対し、1000万円の売買代金の支払請求を行うという場合です。

この場合には、訴額が1000万円なので、経済的利益は、1000万円ということになります。

請求の金額が算定できないもの

請求の金額を擬制するもの

例えば、X(妻)が、Y(夫)に対し、夫婦関係調整調停(離婚)を申立てるという場合がこれにあたります。

この場合、離婚という概念は、身分関係の変更を求めるものであり、Aさんの身分は何万円、Bさんの身分は数百円といった金銭的な算定ができません。

そこで、経済的利益を一定金額にみなすことにより、そのみなした金額を経済的利益として、報酬算定をするということになります。

例えば、上記の離婚調停であれば、経済的利益を一律800万円とみなすことで算定することになります。

もっとも、これによるとかなり高額になりますので、現実と乖離してしまうとして、みなし金額や基本報酬を別の金額にしている事務所も多いです。

請求の金額に関わらず、一定の幅の中で決めるもの

例えば、遺言書の作成などがこれにあたります。

事件の難易度に応じて、一定の幅の中で、困難なものは高い方で、典型的なものは低い方で報酬を決めるということになります。

この場合は、事務手数料ということで、着手金・成功報酬の別なく頂戴するということがあります。

タイムチャージ方式

1時間いくらといった形で決める場合です。

これは、弁護士の力量に応じた1時間など単位時間あたりの金額と解決までの作業時間をかけて、報酬を算定するものです。

被害金額の少ない交通事故事件やM&A事件などでこの方式を取ることが多いです。

報酬の計算式ー基本

後述して解説していきますが、まずは、算定にあたって用いる報酬の計算式を確認しておきましょう。

一番基本になりますので、訴訟から確認します。

着手金の計算式

着手金の計算式は、

  • 経済的利益が300万円以下の部分⇒経済的利益の8%
  • 経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の部分⇒5%
  • 経済的利益が3000万円を超え、3億円以下の部分⇒3%
具体例

「部分」というのがややこしいですが、例えば経済的利益が500万円の場合には、次の通りとなります。

  • 経済的利益が300万円以下の部分=300万円の部分の8%=24万円(A)
  • 経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の部分=200万円(301万円から500万円)の部分の5%=10万円(B)
  • A+B=24万円+10万円=34万円

このような2段階の計算を経て、その合算で着手金を算定していきます。

簡易な算定式

しかし、このような計算方法では、煩雑ということもあり、簡易に算定できる方法があります。

その一発で計算できる計算式が、次の計算式になります。

  • 経済的利益が300万円以下の場合⇒経済的利益の8%
  • 経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の場合⇒5%+9万円
  • 経済的利益が3000万円を超え、3億円以下の場合⇒3%+69万円

前述の計算式と異なるのは、「部分」が「場合」になっているところです。

これによれば、合算の作業を行わずに一発で算定することができます。

具体例

例えば、上記と同じ経済的利益が500万円の場合を想定してみると次のようになります。

経済的利益が500万円なので、「経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の場合」にあたる。

500万円×5%+9万円=25万円+9万円=34万円

このように前述の計算式を用いた場合と同じ計算結果になります。

最初のうちは慣れないため、何度かご自身で計算してみると良いでしょう。

成功報酬の計算式

成功報酬の計算式は、着手金の計算式の概ね倍というように理解しておけばいいでしょう。

ただし、経済的利益としては、請求金額全額になるのは、完全勝訴の場合であり、和解や一部勝訴の場合には、その金額に応じた金額になります。

そのため、完全に着手金の倍となることは珍しいです。

計算式

計算式は次の通りです。

【弁護士報酬基準上の計算式】
  • 経済的利益が300万円以下の部分⇒経済的利益の16%
  • 経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の部分⇒10%
  • 経済的利益が3000万円を超え、3億円以下の部分⇒6%
【一発で計算できる計算式】
  • 経済的利益が300万円以下の場合⇒経済的利益の16%
  • 経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の場合⇒10%+18万円
  • 経済的利益が3000万円を超え、3億円以下の場合⇒6%+138万円

依頼者への説明の仕方

これまで報酬の構成や、それら算定方法を確認してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。

このように弁護士報酬は複雑な計算を辿って算定されます。

依頼者へは、計算結果だけお伝えできればいいのですが、その後のトラブル防止のため、計算経過の方も十分な説明が必要です。

そこで、計算経過の方を説明したいのですが、これがなかなか難しいです。

そのため、私は、報酬の構成要素と、各算定方法を説明し、算定方法のうち特に着手金・成功報酬の計算式については、ざっくり8%や16%と説明するところから始めています。

着手金・成功報酬は、金額が上がるにつれ、割合が小さくなっていきますから、このように最大値をお伝えしておけば大きな齟齬にはなりづらいと考えるためです。

あとは、図や絵を用いながら説明できるとビジュアル的にもわかりやすく印象に残りやすいかもしれません。

この辺りは、何度か説明体験を通じて、ご自身なりのやりやすく分かりやすい説明方法を模索してみてください。

おすすめの本

これまで民事事件一般の報酬の算定の仕方について説明してきました。

この本では、各論的な報酬の考え方が記載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

新人弁護士に報酬の算定を最初から任せる事務所は少ないかもしれません。

しかし、お金に関することは押さえておいて損はありません。

むしろ、弁護士も経済社会に身を置く以上その感覚が養われていなければ、上手な事件解決はできないでしょう。

本日もお仕事がんばってください!

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