受任後、初回接見まで
目次
受任手続きは、前回の記事で確認しました。
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受任手続きだけでも大変ですが、その後初回接見で確認すべき事項を抑えておかなければ、刑事事件は時間がタイトですから、適切な弁護活動ができません。
そのため、今回は、初回接見以降の手続きを見据えながら、迅速な弁護活動の観点から、最低限初回接見において確認するべき事項を確認しましょう。
なお、構成上、刑事手続きの全体を確認し、弁護活動として想定される活動を確認したうえで、初回接見で行うべき確認事項を確認する、ということになりますが、手続き・活動については、十分理解しているという方は、最後の初回接見まで飛んでください。
初回接見のあとに待っている手続き
初回接見にて、被疑者に説明することではありますが、刑事事件では、その後の動きが決まっています。
手続きの動きは、弁護人として理解していることが前提ですので、不慣れなうちは、本当に時間がなく焦ります。
そこで、今回は、ある程度の流れを確認しましょう。
起訴・不起訴の判断まで
まず、起訴までは、大きく分けて
- 逮捕
- 初回の勾留
- 勾留の延長
- 起訴・不起訴等の処分の判断
の段階に分かれます。
逮捕
- 警察から検察を通す場合…逮捕時から48時間以内
- 検察が直逮捕…24時間以内
に勾留するかどうか検察官が判断しなければなりません。
しかし、実際には、上記時間制限よりかなり前の時間で、勾留請求、勾留決定がなされることが少なくありません。
軽微な事件で、勾留を防ぐ弁護活動を行う場合は、そのような捜査機関の動きを前提として、迅速に活動しましょう。
勾留
勾留請求に対し、裁判所が勾留決定をした場合、その後10日間が、初回の勾留期間となります。
その後、初回の勾留期間の満期時までに、勾留延長の請求が行われると、1度だけ10日間の延長決定がなされる可能性があります。
後述しますが、それぞれに対し、積極的に勾留による身柄拘束からの解放を目指しましょう。
起訴・不起訴の判断
検察官は、勾留期間の満期時点までに、被疑者を起訴するかどうか、その判断を留保するか検討します。
処分には、
- 起訴決定
- 処分保留
- 不起訴処分
があります。
さらに、起訴処分には、
- 通常公判請求
- 略式起訴
- 簡易な手続きによる起訴
があります。
起訴しない場合でも、基本的には処分保留とすることが多いです。
そのため、実務的によく見るのは
- 通常公判請求
- 略式起訴
- 処分保留(在宅)
になります。
起訴後の手続き
起訴後は、公判期日が待っています。
裁判員裁判については、また別記事で解説します。以下は、通常の裁判員非対象事件について解説します。
起訴後の手続きについて大まかに確認すると、
- 保釈請求の検討
- 初回の公判期日の指定
- 証拠開示(任意)
- 当事者間の事前の打ち合わせ
- 初回公判
- (2回目以降の公判)
- 判決期日
となります。
公判を見据えて接見時から動くべき弁護活動
初回接見時の時点では、まだ情報が少ないですから、公判請求されるかどうかも実際にはわかりません。
しかし、公判時点で、初回接見時点まで遡って手元にあるべき証拠として考えた場合、必要となる証拠を作成していく必要があります。
そのような観点からは、時的要素が重要になる証拠は、初回接見時に確認したり、動けるようにしておくと良いと言えます。
具体的には
- 早期の時点で反省していた
- 早期の時点で示談が成立していた
などです。
反省し行動として表すことが早期の時点でできていれば、認め事件の情状弁護では、程度の差はあれど、有利な証拠の一つとなるでしょう。
初回接見のあとに行うべき弁護活動
初回接見を踏まえて、行うべき弁護活動としては、
- 身柄開放活動
- 示談交渉
となります。
また、身柄開放活動としては
- 勾留請求(決定)しないことを求める意見書
- 勾留決定に対する準抗告
- 勾留決定取消請求
- 勾留延長請求(決定)をしないことを求める意見書
- 勾留延長決定に対する準抗告
- 勾留延長決定取消請求
- 保釈請求
があります。
身柄解放を求める際の添付資料
- 身柄引受書
- 謝罪文、反省文
- 誓約書
- 示談書
- 贖罪寄付
などです。
また、
- 弁護士の面前での供述調書
を作成し、各種確定日付を取得する方法を用いて取得しておくことも重要になる場面があります。
勾留請求(決定)しないことを求める意見書
逮捕後、勾留請求前の段階です。
そのため、時間がタイトゆえできる弁護活動にも限界があります。
比較的弁護側の意見も汲んだ判断がなされる傾向も見えてきているとはいえ、勾留決定が一度出てしまうと覆すことが難しいです。
そのため、時間的限界があるとしても、可能な限りは、有利な証拠の収集・作成とともに意見書を検察官・裁判官に提出しましょう。
具体的な手続きは、
- 捜査機関に掛け合い、勾留請求を行うか、いつ頃行う予定か、捜査機関的に気になる点の確認
- 身柄引受書の作成や反省文、示談成立など被疑者に有利な証拠を収集、作成
- 意見書は、重要な事項に絞り込み、最短で作成
するということになります。
勾留決定に対する準抗告、勾留決定取消請求
勾留決定が出たあとから延長請求等がなされる前の時点です。
両手続きは、基本的には同時に請求するのがいいでしょう。
違いは、
- 準抗告…決定が出るまでの事情しか踏まえない
- 取消請求…決定が出たあとの事情も踏まえる
というのが基本ですが、裁判官次第では、準抗告においても、その後の事情を踏まえたりするようです。
一見して、取消請求の方がその後の事情も踏まえて判断してもらえるとして有利とも思えます。
しかし、準抗告においては、既に検察官の意見を踏まえて判断しているため、検察官への求意見が不要です。
他方、取消請求においては、検察官の意見を踏まえていません。そのため、求意見の手続きが必要になり、場合によっては、数日判断までラグが生じます。
そこで、両請求を同時に立てる、というのが原則的な考えとなるということになります。
なお、私は、表題を変え、項目を整えるのみで添付資料や内容は同じ請求書を作成し提出しています。
手を抜いているようにも思えますが、上記のように裁判官によってその後の事情の取り扱いが異なりますし、同じ裁判官が判断するとすれば、形式含め同じ方が読みやすく、判断も早くなるのではないかと考えるためです。
勾留延長請求(決定)をしないことを求める意見書、勾留延長決定に対する準抗告、勾留延長決定取消請求
基本的には、上記意見書等に対応するかたちで、同じように考えれば足ります。
私の経験として、延長に対しての意見書を提出したところ、延長決定が10日間を下回って出たということがあります。
元々、そのような判断だった可能性もありますが、弁護活動の影響もある可能性を踏まえれば、やって損はないと思います。
保釈請求
保釈請求は、起訴後に行うことができます。
なお、勾留取消請求を行っていたところ、起訴されてしまったという場合にも、同請求は有効です。
保釈請求書の基本的な要素は、
- 権利保釈が認められること
- 客観的・主観的に証拠隠滅のおそれがない
- 客観的・主観的に逃亡のおそれがない
- 身柄拘束が被告人に不利益になること
です。
初回接見で行うべき活動
以上のように、その後の手続き・弁護活動を見据えて初回接見で確認するべき事項を確認します。
- 身柄解放を急ぐべき事情があるか
- 連絡するべき人はいるか(その人との関係性、特に怪しくないか)
- 身柄引受人(情状証人)の候補
- 既に関係している福祉機関の有無
- 認め事件の場合、今回の事件にその時点で思うこと(反省など)
- 面会に来てほしい人がいるか
- 今回の事件を認めるのか、否認するのか(ニュアンス含む)
また、被疑者と信頼関係を構築する必要があります。その後の弁護活動の迅速さで示す部分もありますが、初回接見において構築できる部分もあります。
- 弁護人と捜査機関の立場の違い、味方で、話は漏れない
- 権利の説明(黙秘権、署名押印拒絶権、訂正権)
- 黙秘したいと言っている場合の黙秘のメリット・デメリット
- 他の人に事件のことを話す際に、話していいのか、どこまでいいのか
- 弁護人としてできないこと
- ペンは貸してもらえること
- 体調の不具合や不安なことはないか
- その後の手続き(被疑者ノート見せながら)
などの話をすると、ある程度会話もできますし、少しでも被疑者のことを考えている、ということが伝わるでしょう。
私は、この辺りの説明は、口頭でしつつも、重要なことは簡単なメモで渡す場合もあります。書面で残るため、あとで悪用されないように気をつける必要はあります。
差し入れとしては、
- 被疑者ノート
- A4のレポート用紙 5枚程度
が考えられます。
遠方の場合は、予め
- 切手
- 封筒
を渡しておき、接見に行かずとも緊急の際は、弁護人に連絡できるよう準備しておくというのも良いでしょう。
ただし、一度ある意味サービスのような差し入れをしておくと、その後はさらに要求されかねないという危険性も踏まえて差し入れましょう。
まとめ
以上が初回接見で確認すべきことになります。
その後の手続きも踏まえ、迅速に活動することができれば、並行して複数の事件を動かしていくことができるようになるでしょう。
どの事件も初めてが一番緊張しますし、不安です。
ですが、できるだけ、事前にその後の手続きや行うべき活動を把握しておけば、あとになって、やり忘れていたことに気づく、ということも少なくなるでしょう。
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