冒頭陳述の作成方法ー基礎編
目次
冒頭陳述は、刑事裁判の公判手続きで、弁護人が最初にストーリーを語る場面です。
これから弁護側が主張・立証していくにあたり、裁判官にバイアス(先入観)を与える重要な手続きですので、弁論と比して簡単なものになるとはいえしっかりと作成しなければなりません。
そこで、今回は、冒頭陳述要旨を初めて作成する新人弁護士に向けて、基本的な作成方法として、冒頭陳述の構成要素や大枠を確認していきましょう。
冒頭陳述の立ち位置
冒頭陳述は、裁判員裁判ではない通常の公判の場合には、必ずしも行う必要はありません。
公判前整理に付された裁判では、法律上必要的な手続きとなっていますが、そうでない通常の公判では、行わなくても法律上は構いません。
しかし、冒頭でも述べたように冒頭陳述は、裁判官に弁護側の主張の骨子であるいわゆるケース・セオリーというバイアスを与える重要な機会です。
そのため、可能な限り、弁護側も冒頭陳述を行うようにしましょう。
また、必ず行わなくてもいいということの裏返しとして、弁護人が申し出ておかなければ、行わないものとして進められてしまう可能性もあるため、期日の前に裁判所に伝えておきましょう。
冒頭陳述を行うタイミング
冒頭手続きとして、検察の起訴状朗読などを終え、検察官の冒頭陳述のあとに弁護側の冒頭陳述を行うことが多いです。
弁護側の冒頭陳述を行うタイミングは、法律上定まっているわけではない(厳密にいうと検察官の冒頭陳述のあとのどこかのタイミング)ため、裁判官により扱いは異なりますが、多くは検事の冒頭陳述のあとです。
心配な場合は、事前に問い合わせておきましょう。
冒頭陳述の作成に関するルール
冒頭陳述に関するルールとして、行ってはいけないのは、
- 証拠能力のない証拠や取り調べの意思のない資料に基づく主張
- その後の手続きで立証できない事実に基づく主張
- 裁判官に予断・偏見を持たせる主張
です。
これだけ見るとややこしいですが、要するにこれから弁護人が主張・立証しようとするケース・セオリー(弁護側のストーリー)を示すようにするということです。
基本的には、評価は交えずに、評価の前提となる事実を述べていくイメージです。
これをやってはいけない、というルールがあると筆が止まってしまいますが、実際に作成してみて、弁論要旨と同じものが出来上がっていないかという観点で見ると確認しやすいです。
冒頭陳述の構成要素と大枠
冒頭陳述の構成要素としては、否認事件と認め事件で異なります。
否認事件
否認事件での主張のゴールは、「被告人が無罪であること」です。
被告人が犯人ではないことや、構成要件を充足せずに犯罪が成立しないなどです。
そのためには、被告人にアリバイがあることの元となる、被告人が犯行当日、犯行現場以外にいるという事実などを述べることになるでしょう。
認め事件
認め事件では、犯罪の成立自体は争わず、主張立証の中心は、被告人に汲むべき事情があること(情状)になります。
これまでの弁護活動の中で、示談を成立させ、被害法益の回復や処罰感情が減少していること、被告人が反省していることなどを述べることになるでしょう。
作成するうえでの注意点
冒頭陳述の説得力如何で、その後の主張・立証の説得力にも影響が出てきます。
そのため、できるだけ聞き手(裁判官)が弁護人の冒頭陳述を理解しやすいものでなければなりません。
そこで、法律家の文章を作成するうえでは、よく言われることですが、5W1Hを意識し、物語形式にするなど聞き手がイメージしやすいものを作成するように努めましょう。
事実だけを淡々と述べることでも法律家であれば、ある程度自分の中で補足することはできますが、そのような補足を裁判官が行ってくれるかは分かりません。
そのため、できるだけ点と点になった事実たちを線として繋げるという意識をもって冒頭陳述を作成していきましょう。
おすすめの書籍
新人弁護士が刑事弁護を行うにあたり、簡潔にまとまっている書籍が、刑事弁護ビギナーズです。
まとめ
以上で、冒頭陳述の作成方法になります。
冒頭陳述は、繰り返しになりますが、一番最初にこれからの主張立証のバイアスをかける場面です。
そのため、方向性がここで決まるといっても過言ではありません。
そこで、聞き手にどこまでもかみ砕いて説明するということを意識し、説得力のある冒頭陳述を行うようがんばってください。
今日もお仕事がんばってください。
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