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最終弁論要旨はどうやって書けばいいの?無罪主張の場合は?情状弁護の場合は?【国選・刑事弁護の実務】

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最終弁論要旨はどうやって書けばいいの?無罪主張の場合は?情状弁護の場合は?【国選・刑事弁護の実務】

最終弁論の書き方

目次

最終弁論は、弁護人の主張の総まとめです。

最終弁論の書き方は、自由であり、自由であるべきだと言われています。

しかし、新人弁護士にとっては、何らの型もなければ、書きようがありません。

そこで、今回は、最終弁論要旨の書き方の大枠と、最低限書くべきことを確認し、基本を押さえた形を確認していきましょう。

最終弁論の立ち位置

最終弁論は、これまで立証してきた事実をまとめ、弁護人が最初に述べた冒頭陳述が証拠に基づいていること、説得力のあることをプレゼンする場です。

そのために作成するのが、弁論要旨です。

よく冒頭陳述から最終弁論までは、一貫して繋がっており、バラバラのものではない

そうであれば、最終弁論で述べるべきことを、逆算して証拠方法を考え、冒頭陳述を考えなければなりません。

最終弁論を構成する要素

最終弁論では、否認事件と認め事件で記載するべきことが異なります。

大きくは、これらの事実を記載できれば、必要最低限となるでしょう。

否認事件

否認事件では、一部であれ、その部分については、検察官の立証が不足しているとして無罪を主張します。

そのため、検察官が想定している立証構造を考え、どんどん弾劾していきます

争い方は、大きく次の3つになります。

  1. 供述証拠の信用性を弾劾し、事実が認定できないことを主張する
  2. 間接事実の反対仮説を指摘し、推認力の弱さを主張する
  3. 犯人性におけるアリバイ事実などの消極的な事実を立証する

1 供述証拠の信用性の弾劾

例えば、直接証拠(犯人性であれば、「被告人が犯人です。」という目撃証言)の信用性が足りないことを基礎付けるための視認状況の悪さなどを指摘します。

視認状況が悪ければ、犯人が被告人だったとはっきり見えていないことになりますので、信用性が落ちるということです。

2 間接事実の推認力の弾劾

例えば、間接事実により犯人性を推認する場合に、推認力が弱いことを示すために、反対仮説が成り立つことなどを指摘するなどします。

被告人の家に被害品があった場合に、被告人の家は複数人のシェアハウスで被告人以外の者が持ち込んだ可能性などです。

3 アリバイ事実の立証

アリバイ事実は、犯人性において、令和元年1月1日に犯行があった場合に、被告人が飛行機でしかいけないような場所に同日同時刻にいたことなどの事実です。

場合によっては、一番強力な主張立証になるでしょう。

認め事件

認め事件では、事実については、争いがないということですので、情状の事情を出すことで、有罪を前提に減刑を狙います

情状事実は大きく2つに分かれます。

  1. 犯情事実
  2. 一般情状

1 犯情事実

犯情事実は、罪体に関わる事実を主張立証します。

犯情事実は、量刑の幅を決める要素ですので、ある事情はなるべく多く出し、スタート地点をできるだけ被告人に有利なポジションにしましょう。

例えば、示談交渉の結果示談が成立し、被害法益の回復がなされたことや、傷害結果が大きくないことなどを主張します。

2 一般情状

一般情状は、罪体以外の被告人自身の更生可能性などを主張します。

一般情状は、調整要素になりますので、犯情事実に比して劣後はしますが、犯情事実が少ない(ない)場合も少なくありません。

したがって、弁護活動により少しでも多く証拠を出せるのであれば、積極的に出していきましょう。

被告人の反省態度や社会にもどった後家族による監督が期待でき、更生環境として整っていることなどを主張します。

一部否認事件

例えば、共謀共同正犯における実行者が、共謀の事実のみ否認し、単独犯として、認めている場合には、否認事件と認め事件の中間ということになります。

そのため、上記例でいえば、共謀の事実が認められないことを主張し、認めている単独犯の範囲で情状事実を出していきます。

共通する事項(弁護人が相当と考える量刑)

いずれの主張の場合にも、量刑を記載します。

否認事件の場合は、事実自体争うのですから、「無罪である」と主張することになるでしょう。

また、一部でも認めの事件の場合には、できるだけ有利な量刑を述べるということになります。

その観点からすると、思考停止で「執行猶予判決が相当である」と主張しがちです。

しかし、一律そのような主張をしてしまうと、説得力が劣ってしまう場合があります。

例えば、複数回行っているような薬物事犯の場合には、一部執行猶予を主張することも必要になるケースがあるでしょう。

まとめ

上記の必要最低限記載するべき事項を押さえたら、自由に作成することを意識し、自分なりの工夫をしていきましょう。

最終弁論は、プレゼンです。

説得力が大事です。

ぜひ、説得力のある最終弁論を工夫してみてください。

お仕事がんばってください。

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