遺産分割調停における使途不明金の対応
目次
相続、遺産分割事件の相談を受けていくと、相続人の中の一部の者が、被相続人の財産を使い込んでいるとの主張が出ることは少なくありません。
そこで、今回は、そのような使途不明金の主張を持った相談者の申立以降の見通しなどを考えるうえで、使途不明金が遺産分割調停においてどのような取り扱いをされるのか確認していきましょう。
使途不明金とは
使途不明金の主張は、冒頭でも話したように、被相続人の財産を一部の相続人が使い込んでしまったというような主張の中で出てくることが多いです。
遺産分割調停の話し合いの中で調停員は、次のような主張整理をしています。
- 前提問題
- 遺産分割に関する主張そのもの
- 附随問題
それぞれの詳しい解説は別記事にて行いますが、前提問題は、遺産や相続人の範囲に関する問題、そのものは、分け方、附随問題は使途不明金や親族間の事実上の不和などです。
使途不明金の主張の取り扱い
遺産に含まれるための要件
まず、前提として、遺産に含まれる財産には要件があります。
遺産に含まれていないと遺産分割調停で取り扱うことができないため、確認する必要があります。
- 相続開始(被相続人の死亡)時点で、存在する財産
- 遺産分割時に存在する財産
少なくともこの2点を充足する必要があります。
使途不明金は遺産に原則含まれない
使途不明金は、いずれかの時点で、被相続人の財産から離れた財産です。
そのため、使途不明金は上記要件を満たさず、原則遺産には含まれません。
ただし、相続人全員が同意して、遺産に含めてよいという場合には、使途不明金もあるものとして遺産を考えてよいということになります。
しかし、基本的には、相続人の中に使い込んだと主張される者がいる以上は、遺産に含めていいですよ、と同意する可能性は低いです。
そのため、使途不明金は、原則遺産に含まれないことを前提に方針を考える必要があります。
使途不明金の主張をどのように法的構成すればいいか
使途不明金を調停の中で扱えない、ということであれば民事で争うしかありません。
方法は、次の通りです。
- 不法行為に基づく損害賠償請求
- 不当利得に基づく返還請求
これらの請求は、いずれも長所・短所がありますので、比較して検討すべきです。
もっとも、いずれか通ればいいので、選択的に請求してしまうという手段もあるでしょう。
使途不明金を隠されそうな場合の対策
使途不明金の使用を否定する相続人は、その財産を取られたくないから否定するのでしょう。
そのため、場合によっては、仮差押えを検討するなど保全の手段を講じる必要がある場合があります。
当該使途不明金自体を仮に差し押さえることを考える場合には、銀行口座を特定する必要があります。
相続人間で、調停前に交渉等している場合、何らかのかたちでヒントを得られている可能性もあります。
根気よくヒアリングをしましょう。
例えば、一方的に預金の引き下ろし手続きを進められていて、引き下ろし先に、使い込んだ相続人の口座が指定されていたというケースもありました。
まとめ
以上が、使途不明金の主張の取り扱いになります。
相続事件は、これまでの長い親族間の不仲が顕在化し、論点が拡散しがちです。
先の手続きも見通しをつけながら進められると、紛争の長期化が防げますので、頑張りましょう。
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